「今日の会話、あの返事で良かったのだろうか」

「明日の仕事で失敗したらどうしよう」

「もっとこう言えば良かった」

布団に入った途端、このような考えが頭の中をぐるぐる回り始め、なかなか眠れなくなる人は少なくありません。

実際に当院へ来院される自律神経症状の患者さんの中にも、

・寝つきが悪い
・夜中に何度も目が覚める
・朝起きても疲れが取れない

という悩みを抱えている方が多くいます。

その背景には単なるストレスだけではなく、「脳の仕組み」が深く関係しています。

今回は、頭の中で会話を繰り返してしまう人ほど眠れなくなる理由について、脳科学と自律神経の視点から解説していきます。

なぜ布団に入ると考え事が始まるのか

日中は仕事や家事、人との会話などによって脳は常に外部からの刺激を処理しています

しかし夜になり静かな環境になると、脳は外の情報処理から内側の情報処理へ切り替わります。

この時に活発になるのが「デフォルトモードネットワーク(DMN)」と呼ばれる神経回路です。

DMNは、

・過去の出来事を振り返る
・未来を予測する
・自分について考える

といった働きを担っています。

本来であれば適度な内省は必要な機能です。

しかしストレスが強い人や不安傾向のある人では、このネットワークが過剰に働いてしまいます。

すると、

「もし失敗したらどうしよう」

「嫌われているのではないか」

「また症状が悪化するかもしれない」

といった思考が次々に浮かび、脳が休息モードへ移行できなくなります。

頭の中の独り言は脳にとって「活動」そのもの

多くの人は、

「考えているだけだから身体は休んでいる」

と思っています。

しかし脳から見るとそうではありません。

頭の中で会話をしている状態は、実際に誰かと会話している時と似た神経活動が起こっています。

脳内では、

・言語野
・前頭前野
・記憶を司る海馬

などが活発に働いています。

つまり身体は横になっていても、脳は仕事中に近い状態になっているのです。

その結果、睡眠に必要な脳のクールダウンが行われず、寝つきが悪くなります。

不安が強い人ほど扁桃体が興奮している

眠れない人の脳を調べる研究では、「扁桃体」という部位の過活動が確認されています。

扁桃体は危険を察知する警報装置のような役割を持っています。

本来であれば、

・火事
・事故
・敵の存在

などから身を守るための機能です。

しかし現代人の場合は、

・仕事のプレッシャー
・人間関係
・SNS
・将来への不安

などによって慢性的に刺激され続けています。

すると脳は、

「まだ危険が去っていない」

と判断します。

危険があると判断している状態では、当然ながら深く眠ることはできません。

なぜなら脳は「今は休む時ではない」と考えているからです。

自律神経が交感神経優位になる

頭の中で会話を繰り返している人は、交感神経が優位になりやすい傾向があります。

交感神経とは活動モードの神経です。

・心拍数を上げる
・血圧を上げる
・筋肉を緊張させる

といった働きを持っています。

本来であれば夜になると副交感神経が優位になり、身体は睡眠モードへ入ります。

しかし脳が考え続けている状態では、

「休む準備」

よりも

「問題を解決する準備」

が優先されてしまいます。

その結果、

・寝つきが悪い
・眠りが浅い
・夢を多く見る
・朝から疲れている

という状態が起こります。

睡眠不足がさらに考え事を増やす悪循環

さらに厄介なのは、睡眠不足そのものが脳を不安定にすることです。

睡眠不足になると前頭前野の機能が低下します。

前頭前野は感情をコントロールする司令塔です。

この働きが弱くなると、

・不安を感じやすい
・ネガティブ思考になる
・感情的になる

という状態が起こります。

するとさらに考え事が増え、また眠れなくなる。

この悪循環に入る人が非常に多いのです。

「考えないようにする」は逆効果

眠れない人がよくやる失敗があります。

それは、

「考えないようにしよう」

と努力することです。

実は脳は否定形を処理するのが苦手です。

例えば、

「白い熊を想像しないでください」

と言われると、多くの人は白い熊を思い浮かべてしまいます。

同じように、

「不安を考えない」

と努力するほど、脳は不安を監視し続けます。

その結果、かえって眠れなくなるのです。

眠るために必要なのは脳を安心させること

睡眠に必要なのは気絶するように眠ることではありません。

脳が安全だと認識することです。

そのためには、

1. 寝る1時間前は情報を減らす

スマートフォンやSNSは脳を刺激します。

寝る前はできるだけ情報入力を減らしましょう。

2. 考え事を書き出す

頭の中にある不安を紙に書き出します。

脳は「覚えておかなくて良い」と認識しやすくなります。

3. 呼吸をゆっくり行う

吐く息を長くする呼吸は副交感神経を活性化させます。

4秒吸って、8秒かけて吐く呼吸がおすすめです。

4. 首や後頭部の緊張を緩める

首周囲には自律神経と深く関係する神経や筋膜が集中しています。

長時間の緊張状態が続くと脳は危険を感じ続けます。

シナプス療法が不眠や脳疲労に有効な理由

当院で行っているシナプス療法では、単に筋肉をほぐすのではなく、神経伝達の異常に着目します。

慢性的な不眠や自律神経症状の方では、

・首の過緊張
・頭部周囲の神経ストレス
・身体の防御反応

が強く残っているケースが少なくありません。

これらが改善すると、

「気付いたら眠れていた」

「頭の中の独り言が減った」

「朝まで眠れるようになった」

という変化がみられることがあります。

睡眠は脳が安心して初めて成立する機能です。

もし頭の中で会話が止まらず眠れない日が続いているなら、それは意志の弱さではなく脳と自律神経が休息モードへ切り替わっていないサインかもしれません。

睡眠薬だけに頼る前に、脳と身体の緊張状態を見直してみることも大切です。

 
 
 
 

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